「七号系自社株酵母」とともに歴史を刻む決意
宮坂醸造の酒蔵で発見された清酒酵母「協会七号酵母」は日本の酒造りに大きな影響を与え、清酒「真澄」の名前も全国、そして世界でも知られるようになります。しかし時代の流れとともに消費者のニーズも変わり、それに応えるための新しい酵母も誕生。宮坂醸造でも「協会七号酵母」以外の新しい酵母を使用しニーズに合わせた製品造りを行いますが「協会七号酵母」の使用率はどんどん下がっていきました。
「協会七号酵母」の発見から徐々に製造量を増やした「真澄」は長野県で最も多く出荷されるようになりますが、清酒全体の消費量は昭和48年(1973年)をピークに減少に転じ、これにあわせて「真澄」も少しずつ出荷量が減少して行きます。そこで、平成17年(2005年)に「真澄」に続くセカンドブランド「みやさか」をリリース。蔵元のファミリーネームを冠した「みやさか」のコンセプトは、全量信州産の酒造好適米を使用した純米酒で、最高のおいしさのみを追求すること。このときでも、フルーティな吟醸香のある「協会七号酵母」以外の酵母を多用していました。
昭和21年(1946年)に「協会七号酵母」が発見されてから70年目にあたる平成28年(2016年)には、「みやさか」のブランドイメージを一新。名前を「MIYASAKA」とし、コンセプトを「七号酵母での挑戦」と定め、酵母は「協会七号酵母」、酒米には地元長野県産の美山錦を使用した、新たな味わいを誕生させました。また、こうした取り組みが「協会七号酵母」のポテンシャルを再認識するきっかけにもなったといいます。
近年も変わらず香りの高い清酒が高く評価されていますが、「協会七号酵母」で造ったお酒は華やかな香りは強く出にくいといわれ、これまで普通酒に使用されることが多い酵母でした。一方、飲み飽きず、飲み疲れすることなく、食事とともに穏やかに楽しめるという特徴もあり、蔵内でも「協会七号酵母」の良さや可能性を再確認し、次第に「協会七号酵母」が宮坂醸造のアイデンティティであると認識されていきました。
令和元年(2019年)には、若手社員たちが新たに社内で保存していた「協会七号酵母」の中から再選抜を行い、選抜された「七号系自社株酵母」での酒造りで原点回帰することを発表。「真澄らしさ」「料理の味わいを引き立てる質の高い食中酒」というテーマを掲げて、新たなスタートを切りました。そして、「真澄」の理想とする味わいと香りを実現するために試行錯誤を繰り返し、満を持してフラッグシップとなる「こだわりの真澄」シリーズ「真朱-AKA-」「漆黒-KURO-」「白妙-SHIRO-」「茅色-KAYA-」が誕生。その後、宮坂醸造で造るほとんどのお酒を「七号系自社株酵母」で醸すよう舵を切りました。